不動産の賃貸借契約は、所有者と賃借人の契約です。 賃貸中の不動産を、入居者との契約も含めて同時に売り渡す取引を居抜き物件の譲渡といいます。  不動産の売買は所有権の移転取引ですが、居抜きの場合は、賃貸借契約の貸し手の地位を新しいオーナーに譲り渡す契約なので、法律上は、所有権の移転と、契約上の地位の移転を同時に行う取引です。 契約上の地位の移転の効果は賃借人には及ばず、賃借人は、元のオーナーとの取り決めを新しいオーナーに引き継ぐよう求めることができます。  そのため、賃貸中の物件を取引するときは、賃貸借契約の内容を売り手と買い手の間でも確認しておく必要があります。また、賃貸借契約に記載された敷金債務も新しいオーナーに引き継ぐため、売り手である元のオーナーは契約書に記載された敷金の金額を、新しいオーナーに引き渡しておきます。  実務では、買い手が支払う売買代金から、引き継ぐ保証金債務を相殺して支払うのが一般的です。

居抜き売買と法律効果について

居抜きの不動産取引とは、不動産の所有権だけではなく、賃貸借契約の貸主の地位、造作や備品などを、現状のまま売却する取引です。  法律上、賃貸借契約の貸主の地位を譲渡するにあたっては、賃借人から預かっている敷金返還債務、賃借人との物件の利用ルールについては、買い手である新しいオーナーが条件を引き継がなくてはいけないので、売却にあたっては、賃貸借契約書の写しも渡しておく必要があります。  賃借人は、オーナーが変わっても、家賃の支払先が変わるほかは、今まで通り使い続けることができます。